エアレース開幕戦は惨敗でも、室屋義秀が「次は期待して」と言えるわけ (5ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by red bull

 だが、不測の事態に遭遇しながらもチームとしてトラブルを切り抜けられたこと、さらには、十分に優勝争いができるだけのポテンシャルを示したことの意味は決して小さくない。室屋は前日の夜とは打って変わり、安堵の表情を浮かべて語る。

「エンジンのトラブルはあったけれど、フライトとしては、ある意味リスキーなコースを狙いながらも計算通りのところを完璧に行けていたし、極めて状態はよかった。周りもよく見えていて、自分のコンディションもよかったし、年間を通してこの状態をきちんと保っていければいいと思う」

 そして、室屋は「年間8戦のうち、2戦くらいはこういうこともあるだろうと想定していたし」とつけ加え、笑いながらこう話した。

「でも、初戦でいきなり、2戦のうちのひとつを使っちゃったからな。本当はもうちょっと先に取っておきたかったんだけど」

 結果だけをみれば、残念でもあり、もったいなくもあった今季開幕戦。だが、一時は最悪の事態に陥ったことを含めて考えれば、よく戦った。大健闘のレースだったと言っていいのではないだろうか。

 機体の解体作業が進み、騒がしいハンガー。いつもの笑顔を取り戻した室屋が、周囲の音にかき消されそうな声でつぶやいた。

「予選のときの状態のまま終わっていたら、『(第2戦の)サンディエゴでは期待してください』なんて、とても言えなかったな」

 年間総合優勝を考えれば手痛いノーポイントも、次への期待が高まる"惨敗"だった。


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