小林可夢偉が語る今季。
WEC王座争いは「あれ? いける?」って感じ

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 参戦する3メーカーのなかで、トヨタのマシン『TS050 HYBRID』は決して最速とは言えなかった。というのも、トヨタはWECの選手権全体よりもル・マン24時間耐久レースで勝つことを最優先に考え、ほとんどがスロットル全開の直線で構成されるル・マンに合わせ込んだマシン作りをしていたからだ。

「僕らはそもそも、ル・マンで勝つことをターゲットに空気抵抗の少ないル・マンスペシャルのマシンを開発していたので、正直なところ(ストレート主体の)ル・マンとスパ・フランコルシャン以外では明らかに(他メーカー)負けてたっていうのが実際のところでした。だから、開幕時にはタイトル争いができるなんて思ってなかったし、チームの人たちも誰も思ってなかった。富士で勝って初めて、『あれ? いけるんちゃう?』みたいに意識しだしたんです」

 第7戦・富士で勝ち、続く第8戦・上海でも我慢のレースで2位を掴み取り、最終戦のバーレーンに臨む可夢偉は、「思いっきり戦って、勝ってチャンピオン獲ってやる!」と強い闘志を燃やしていた。

 しかし結果は、ポルシェとアウディに及ばず、ランキング3位。

「(タイトルの)可能性はかなり少ないとは思っていました。『獲れたらすごいよね、やってみよう!』っていう感じで。でも、実際にはそういうレベルじゃなかった。富士と上海は(直線が長くて)僕らのクルマにとってサーキット特性が悪くなかったから、悪くないように見えたけど、バーレーンは少し戦闘力が落ちた。もうちょっといけると思ってたけど、思いのほか落ちたんですね。あまりにもアウディが速すぎて、全部持っていかれてしまって......」

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