「F1界最強」アロンソ&バトンはマクラーレン・ホンダを救ったか? (4ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki

 スタートから1周目でいくつもポジションを上げるアグレッシブなドライビングが高く評価されたが、それはリスクと隣り合わせでもあった。

「スタートはポジションを上げる最大のチャンスだ。レースが始まってしまえば動きのない周回が続くけど、だからこそスタートで順位を上げられれば、入賞のチャンスも一気に高くなる。リスクは高いけど、そもそも僕らには失うものはない。だからアグレッシブに行けるんだ」

 時には、投げやりな態度になることもあった。

 チーム外に伝わることは稀(まれ)だったが、チーム内ではフリー走行で「こんな状況でこれ以上、ドライブしたくない」とデータ収集を切り上げたり、決勝でも「もうピットインさせてくれ」とあきらめたり、「こんな戦略あり得ない!」「冗談だろ!?」とエンジニアに対して不満をぶちまけることも少なくなかった。

 いかに現状を理解しているとはいえ、これだけ状況が厳しいと、レーシングドライバーとしてモチベーションを維持することが難しいのもわかる。

 また、ミスも目立った。

 開幕戦オーストラリアGPでは、目の前を走るハースのマシンのディプロイメント(エネルギー回生)が切れて失速したのを避けきれず、大クラッシュを喫した。第5戦・スペインGPではパワーユニットのトラブルと勘違いし、自らスイッチオフにしてリタイアという場面もあった。タイトル争いをしていたときのような研ぎ澄まされたドライビングセンスが今も健在なのか、ふたたびそういう戦いのなかに置かれたときに卓越した能力を発揮することができるのか、それはわからない。

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