ハミルトンの策謀にも慌てず騒がず。ロズベルグが初のF1世界王者に (6ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki

 ハミルトンが独走すれば、普通に2位で走り切ってタイトルが決まる。しかし、ハミルトンはそうしなかった。"トリック"を仕掛け、ロズベルグにタイトル喪失の可能性を生じさせ、ふたりでアブダビGPの勝利を争う直接対決ではなく、他の2台を巻き込んでチャンピオンシップを争う異色の展開に引きずり込んだ。

「もちろん彼を抜こうと思ったけど、無駄だった。ルイスはあらゆるスキルを使って完璧にコントロールしていたし、抜き去る方法は完全になかったんだ」

 ハミルトンはセクター1だけは全力で走り、ほぼ追い抜きの可能性がない低速のセクター3で後ろを引きつける巧妙な走りを展開していた。タイトル獲得のために、ロズベルグが避け続けてきた直接対決を、自ら突きつけたのだ。

「この4戦、僕は自分にやれるだけのことはやってきた。別に終盤だって緊迫していなかったし、今日勝つのは簡単なことだった。でも、レースをリードしていてもチャンピオンシップを失いかけていることはわかっていた。まったく危なくなんてなかったし、アンフェアなことをやったとも思わない。僕らはチャンピオンシップを戦っていたんだ。そして、僕はレースをリードしていて、ペースをコントロールした。それがルールというものだからね」

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