ハミルトンの策謀にも慌てず騒がず。ロズベルグが初のF1世界王者に (5ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki

「目の前のレースで勝つことだけを考える」と言いながらも、周囲の目には、安全に2位を確保していっているようにしか見えなかった。

 勝ち星はロズベルグ9勝対ハミルトン10勝と、ほぼイーブン。しかしここまで振り返ってきたように、ロズベルグが直接対決でハミルトンを下したことはほとんどない。シンガポールGP、そして強いて言えばハミルトンがリズムに乗れず自滅したバクーくらいのものだ。予選でも、両者が完全にアタック対決をしたレースに限れば、12勝5敗とハミルトンが完全に勝ち越している。

「ハミルトンのトラブルのおかげでチャンピオンになれると言われることについて、どう思う?」
「そのことにプレッシャーを感じない?」
「あなたはまだ、ドライバーとしての名声を確立できていないという声もあるが?」

 チャンピオン争いが佳境に入るにつれて、ロズベルグにはそんな厳しい質問が次々と投げかけられるようになった。そんな質問にも、ロズベルグは正面から向き合うのを避けるようにそつなく答え、自分のために戦い、目の前のレースで勝つことだけを考えると繰り返してきた。

 最終戦アブダビGPでも、ハミルトンと直接対決せずともロズベルグにはタイトルが転がり込む計算になっていた。そんなレースで彼はどう戦うのか? 勝利を目指すと言いながらも、予選で完敗を喫し、スタートでも逆転できなかった時点で、彼はどう出るのか?

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