ジェンソン・バトン引退。ヘルメットに刻んだキャリア17年間の想い (4ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki

 契約上では可能性が残っていても、彼のなかでは引退を決意している。パドックの人々は、彼のそんな真意を感じ取っていた。

「長い旅路だった。8歳のときから僕はモータースポーツの世界でレースをしてきて、多くの夢を抱えてF1の世界に辿り着いた。何者かになりたいと切望し、そして17年間で手にした思い出とともに、F1の世界を去る。いくつものすばらしい思い出、人生を変えるような思い出、いいものも悪いものも含めて、それらとともにこの世界を去るんだ。

 本当に特別な気分だよ。マクラーレンとウイリアムズという、ずっと夢見ていたチームで走ることができ、世界チャンピオンになることもできた。何もないところからスタートして、いかにここまで辿り着いたのか、いつの日か自分の孫に語れればと思う」

 夢とともに辿り着き、思い出とともに去る――。そんな自分のキャリアを幸福だと思えたからこそ、自ら幕を引きたいと思った。そして何より、彼にはもっと大切だと思えるものができていた。

 最終戦アブダビGPには、世界チャンピオンに輝いた2009年にかぶっていたものとまったく同じカラーリングのヘルメットを用意した。

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