ジェンソン・バトン引退。ヘルメットに刻んだキャリア17年間の想い (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki

 モンツァでマクラーレン・ホンダが2017年のドライバーラインナップを発表したとき、シートを失ったバトンは、「引退」ではなく「休養」という立場を選んだ。ウイリアムズからもオファーがあったというが、彼のなかではすでに、過酷なF1の世界から距離を置きたいという思いに抗(あらが)えなくなっていた。

「F1で戦っていると、F1こそが自分の人生になる。しかし今の僕には、間違いなく休息が必要なんだ。だから、2017年はゆっくりとリラックスする。僕は今まで、自分のスケジュール中心に動いてきた。自分がやりたいこと、やるべきことに時間の大半を費やしてきた。しかし、これからは家族や友人たちともっと多くの時間を過ごしたいんだ」

 それでも2018年に復帰の可能性を残し、「休養」と宣言したのは、総帥ロン・デニスからの提案があったからだ。来季はチームの一員として裏方からマシン開発やチーム組織の再編に尽力し、1年後にもう一度走りたいという気持ちになれば復帰も不可能ではないという、よく言えば可能性のある、悪く言えば玉虫色の決断だった。

 しかし、マレーシアGPでF1通算300戦を達成したころから、バトンの言動は急に変わっていった。2017年のマシン開発への関与を否定し、明らかに引退を意識した口ぶりが目立つようになった。

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