さらばヤマハ。有終の美を飾ったロレンソが忘れられない2つのレース (3ページ目)

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

ヤマハで最後のレースを優勝で締めくくったホルヘ・ロレンソ(中央)ヤマハで最後のレースを優勝で締めくくったホルヘ・ロレンソ(中央) その決勝レースでは、マルケスとそのチームメイトのダニ・ペドロサの猛追を受けながらも最後までかわしきり、マルケスとは0.263秒、ペドロサからは0.654秒という僅差で逃げ切って劇的な逆転チャンピオンを獲得した。

 そのレースが、ヤマハ時代でもっとも感動的なレースだった、とロレンソは回顧した。

「ものすごく大きな重圧のなかで、土曜の予選に最高の状態に持っていけた。レース中はホンダ勢からのプレッシャーも激しかった。自分のレース人生でもっとも厳しい接戦になったシーズンで、ヤマハで自分の最後のタイトルにもなった」

 さらに、もうひとつ感慨深いレースとして彼が挙げたのは、2013年のオランダGPだった。

 このレースは、ロレンソが優勝を飾った一戦ではない。金曜のフリープラクティスで転倒した際に鎖骨を骨折し、そのまま欠場するかと思われたが、バルセロナへ戻って手術をし、負傷部位にチタンプレートを挿入してスクリューで固定。ふたたびオランダへ戻ってきて、決勝日午前のサーキットドクターの診断で参戦許可を得てグリッドについた。骨折の手術からわずか1日少々の復帰ではとても走りきることなどできないだろう、という大方の予想を覆し、5位でチェッカーを受けた彼の勇気と強靱な意志に満ちた走りは、多くの人々を感動させた。

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