さらばヤマハ。有終の美を飾ったロレンソが
忘れられない2つのレース

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 MotoGP初レースのカタールGPでは、いきなりポールポジションを獲得して2位フィニッシュ。続くスペインGPでもポールポジションから3位表彰台。そしてシーズン第3戦のポルトガルGPでは、3連続ポールポジションから最高峰クラスわずか3戦目で優勝を達成した。

 この年は初年度だけあって転倒も多く、年間ランキングは4位で終えたが、翌2009年は年間総合2位、そして3年目の2010年にはチャンピオンの座に就いた。以後、2012年と2015年にもタイトルを獲得している。ここまでの9年間で優勝は44回。2位を42回、3位は21回。

 数え切れないほどの優勝経験のなかで、もっとも感慨深かった優勝はどのレースだったのか、とロレンソに訊ねてみた。

 充実した手応えの走りをできたときは、いつも「生涯屈指のレースだった」と言うことの多い選手なので、今回も走り終えたばかりのレースを挙げるのかと思いきや、ロレンソから返ってきた答えは、「去年のここ。2015年最終戦の優勝が、特別に印象深いレースだった」というものだった。

 昨年の最終戦は、チャンピオンシップをリードしていたロッシをシーズン途中からひたひたと追い詰め、第17戦を終えた段階で逆転可能な7点差にまで迫っていた。また、一時期は雪解けムードにあったロッシとの緊張関係も、このころにはふたたび最高潮に達しており、ロッシとマルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)の確執もさらに絡んで、レースウィークのバレンシア・サーキットは異様で不穏な雰囲気に包まれていた。

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