名パイロットの死と、室屋義秀の初優勝。激動のエアレースを振り返る (6ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki

 図らずもファイナルシーズンとなった今年、アルヒは年間総合3位に入り、優勝のドルダラー、2位のマット・ホールとともに歓喜に浴する栄誉を得た。だが、ラスベガスで行なわれた表彰式に、主役のひとりはいなかった。あらためてアルヒの実力を証明する結果となった晴れの舞台は、慰めになるどころか、むしろ彼を失った悲しみを一層深くした。

 アルヒを失ったエアレースは、チャレンジャークラスから昇格したクリスチャン・ボルトンを第7戦から新たに加えると、何事もなかったかのように、粛々と進められた。第7戦のレース前に黙祷こそ捧げられたが、言い換えれば、それだけ。エアレースを支えてきた功労者に対し、あまりに配慮と敬意を欠いたドライすぎる対応にも感じた。

 だが、アルヒ自身、情け無用の真剣勝負の場に、いつまでも悲嘆がとどまっていることをきっと望んではいないだろう。

 2017年、アルヒのいないシーズンが始まる。22番をつけたシルバーの機体をもう見ることはできないが、熾烈な空中戦はこれからも続く。エアレースが生んだトップパイロットが残した功績に感謝するとともに、あらためて冥福を祈りたい。

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