名パイロットの死と、室屋義秀の初優勝。激動のエアレースを振り返る (5ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki

 さて、今年のレッドブルエアレース・ワールドチャンピオンシップを振り返るにあたり、最後に、今は亡きトップパイロットにも触れておきたい。言うまでもなく、ハンネス・アルヒのことである。

2008年以降、年間表彰台を逃したことがなかったアルヒ(c)red bull2008年以降、年間表彰台を逃したことがなかったアルヒ(c)red bull 9月に行なわれた第6戦を終え、年間総合3位につけていたアルヒは、レースからわずか5日後にプライベートでヘリコプター事故に遭い、命を失った。あまりに突然の、にわかに信じがたい訃報だった。

 昨年から今年にかけ、ピーター・ベゼネイ、ポール・ボノム、ナイジェル・ラムと、「エアレースの顔」の引退が相次いだ。それはそれで寂しい出来事ではあるが、彼らが自分の意思で決めたことなら仕方がない。

 しかし、アルヒの場合はそうではない。誰ひとりとして望んではいない不慮の事故で、2008年には年間総合優勝を果たしているトップパイロットを突然に失ったのだ。こんなに悲しい出来事はない。

5 / 6

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る