スズキを去る功労者エスパルガロ。残り2戦で有終の表彰台獲得なるか (2ページ目)

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 好スタートを決めて序盤から上位を走行していたアレイシ・エスパルガロ(チーム・スズキ・エクスター)がレース終盤の23周目に転倒した瞬間は、ため息ともどよめきともつかない声が会場に大きく響いた。

 冷たい雨風に悩まされた今回のレースウィークで、エスパルガロは土曜午後の予選を終えて4番グリッドを獲得。決勝レースでも、一貫して表彰台圏内につけていた。スズキのMotoGP復帰と同時にこの陣営へ加わったエスパルガロは、年少のチームメイト、ビニャーレスがすでに表彰台と優勝を獲得しているのに対して、まだ自身はスズキでの表彰台経験がない。

 ビニャーレスが才能と将来性を買われてファクトリーライダーに抜擢された一方、エスパルガロは豊富な経験で開発の主軸を担うことを期待されて加入した。その背景を考えれば、彼が内心で忸怩(じくじ)たるものを抱えていただろうことは想像に難くない。また、チームとともにマシンの戦闘力を高めてきた自負を持ちながらも来季の契約更改に至らなかったこともあり、今回を含むシーズン残りの3戦で表彰台を獲得したいという思いは、エスパルガロの心中でさらに強くなっていた。

 前週の日本GPで2列目6番グリッドからスタートし、表彰台まで0.5秒差の4位でフィニッシュした際には、レース後の彼に、今季ベストリザルトの達成感と表彰台を逃した悔しさのどちらが強いか、と訊ねたところ、「満足してるし、残念だったし、両方だよ」という言葉が返ってきた。

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