不具合に苦しむ小林可夢偉の嘆き。「新車を買ってくださいよ......」 (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文・写真 text & photo by Yoneya Mineoki

 だが、マシンに自信を持つことができなければ、そんなリスクを冒すことすらできなくなる。

 可夢偉はクラッチにも問題を抱えている。去年あれだけ得意としていたスタートが、まったく決まらない。それは、クラッチの動作に違和感があるからだ。

「滑ってるところから、一気につながってしまうんです。『0か100しかない』みたいな感じ。ウェイティングフェイズ(クラッチパドルの開度)が61%で、『62%にする微調整がすごく重要なんだよね』と一生懸命やってて、エンジンの振動でそれがズレるから、キープするのに(ステアリング上の表示を見ながら)めちゃくちゃ集中してるんですよ。そのくらい一生懸命やってるんですけど、うまくいかないんです」

 土曜のレース後、可夢偉はピットガレージ内でマシンのコクピットに座り、エンジンをかけ、僚友ナレイン・カーティケヤン用のモノも含めてチーム内にあるステアリングを取っ替え引っ替えし、クラッチの動作を確かめた。何度も何度もクラッチをつないでみては、そのたびにマシンを押し戻して、またつないでみる。

「前にさえ出てしまえば勝てるから、要は予選とスタートだけなんですよ。でも、今は両方ダメでしょ? 今はポールを獲っても、抜かれる自信しかないからね」

 そう言って笑うが、可夢偉の目は笑っていない。これだけ負けず嫌いの人間なのだから、勝てなくて悔しくないわけがない。笑ってなどいられるわけがない。

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