予選3位の佐藤琢磨が謎のクラッシュ。
インディカーはもう終盤戦

  • 天野雅彦●文 text by Masahiko Jack Amano  松本浩明●写真 photo by Hiroaki Matsumoto

 しかし、レースでの琢磨は大活躍を見せることはできなかった。摂氏20度に届かない気温と強風という難しいコンディション下でスタートした直後、1周目のターン3(最終コーナー)で単独スピンを喫したのだ。「強風が襲いかかった?」「タイヤの空気圧設定が狂っていた?」。それぐらいしか理由の思いつかない不可解なクラッシュだった。前を行くマシンとは十分な間隔を保っており、先行するマシンが奇妙な動きをして彼のマシンに乱気流を浴びせたわけでもない。

「なんの予兆もなしに突然リアのグリップがなくなった。スピンしてターン3のウォールに突っ込んだ」と、琢磨はアクシデントの状況を説明した。

「突風とかじゃなく、原因はウィングのセッティングにあった。計算ミスがあって、フロントに大き過ぎるダウンフォースが発生していたから、リアが軽くなっていてスピンした」

 身体に大きな怪我がなかったのは、セイファー・バリアという衝撃を吸収する壁にぶつかったおかげだ。琢磨は説明を続けた。

「予選後のプラクティスで僕らのマシンは速くなかった。その時と今日とではコンディションが大きく違っており、風の影響も考えたセッティングをマシンに施した。フロントにもっとダウンフォースが必要だろうということになったので、ウィングを立てた。そして、大きめのガーニー・フラップも着けた。そうしたら、グリップが考えている以上に上がり過ぎてしまった。想定したよりも3.5パーセントもフロントのダウンフォースは大きくなっていた。スピンをして当然だった」

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