大苦戦のスーパーフォーミュラ。小林可夢偉「ゼロからの再スタート」 (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文・写真 text & photo by Yoneya Mineoki

 実はその数分前、決勝朝の30分のフリー走行を終えてマシンを降りたばかりの可夢偉は、ヘルメットを脱ぐなり苛立っていた。

「なんで出られへんかったん? 何やってたん?」

 わずかな時間でも無駄にしたくない、たった30分のセッション。最後に慌ただしくコースインをしようとしたところで、メカニックが止めに入った。タイヤの内圧調整が行なわれておらず、その作業を待たなければならなかったからだ。

 待たされたのは、ものの10秒程度だっただろうが、その瞬間の可夢偉にとってはその何倍も長い時間に感じられたことだろう。実際、セッション終了のチェッカードフラッグが振られる直前の数秒の差でコントロールラインを通過できていれば、あと1周多く走ることができたのだ。

 その苛立ちを押し殺して、可夢偉は気持ちを切り換えようとしていた。

 スーパーフォーミュラで2年目の今年、可夢偉の目標はもちろん勝つこと。そしてチャンピオンを獲ることだ。1シーズンの経験から、その自信も十分にあった。

  しかしフタを開けてみれば、チームは低迷した。スポンサーが減って財政が圧迫され、経験豊富な人材も他チームに流出してしまったからだ。チーム・ルマンのガレージを見回してみると、若いスタッフが多いのがわかる。経験の浅い彼らは、実戦を通して学び成長していくしかない。緊迫したレースの場では、ミスも起 きやすくなってしまう。

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