【エアレース】室屋義秀が「敗れても強い」ファステスト・ルーザーに (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki

 室屋はほっとした表情を見せ、あらためて歓喜の言葉をもらす。

「長い飛行機人生のなかで、1番になるっていうのが初めてだったから。それはやっぱり、もう単純にうれしかった」

 とはいえ、この優勝は決して不意に訪れたものではない。「チームの体制は整っていたので、どこかで勝てるだろうという実感はあったし、取れるだけの実力もためてきた。ラッキーで取ったわけではないから」。室屋はそう言うと、語気を強めて続けた。

「だからこそ、価値ある1勝だった」

 そして7月17日、室屋はハンガリー・ブダペストで開かれた今季第4戦に臨んだ。結果から言えば、室屋は5位。自身、「前回が優勝だったことを考えれば、残念は残念」という結果である。それでも、前回の優勝が決して偶然ではなく、「優勝できるだけの実力をためてきた」結果であることを証明するという意味では、今回のレースは、間違いなく「価値ある1戦」だった。

 第3戦同様、今回もまた悪天候により前日の予選が中止となったレースは、パイロットにとっては難しい条件でのフライトを強いられることになった。朝から降り続く雨は、小雨になることはあっても、完全に止むことはなく、しかも、ドナウ川の上に設置されたレーストラックには、パイロンを大きく揺らすほどの強い風が常に吹きつけていた。

「そもそも各ゲート間の距離が短く、難しいコース設定だったうえに乱気流がひどく、極めて難しいコンディションだった」

 レースを終えた室屋もそう語っていたほどで、事実、スケジュール進行は天候の回復を待ってたびたび遅れが生じた。最終的にファイナル4は中止となり、レースはラウンド・オブ・8で打ち切りとなっている(最終順位は、ラウンド・オブ・8の勝敗とタイムによって決定した)。

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