10年ぶりの下克上。非ワークスの
ジャック・ミラーがMotoGP初優勝

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira  竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

「こういうときのレースは、ポイントを大量に稼ぐか、大量に失うか、両極端の結果になる。チームからは、『まずはとにかく、レースを完走するように』と40回くらい繰り返し言われた(笑)」と、"いつでも誰でも転べる状況"を端的に振り返った。そして、そのレース終盤に自分自身をオーバーテイクして最高峰初優勝を飾ったミラーに対し、「ジャックを祝福したいと思う。この難しいウェットコンディションで、とてもうまく乗れていた」と、賛辞を贈った。

 そのミラーはというと、「とにかく感無量ですごくうれしいけど、今の気持ちは言葉ではちょっと言い表せないよ」と、いがらっぽい声で話した。どうやらチェッカーフラッグを受けた後に、ヘルメットのなかで大声で叫び続けて喉を枯らせてしまったらしい。

「リスクを承知で僕を最高峰に昇格させてくれたホンダに、本当に感謝している。この優勝で、彼らのギャンブルにようやく少しは報いることができたと思う」

 ミラーは2014年にMoto3クラスで最終戦までもつれ込む激しいチャンピオン争いを繰り広げ、翌2015年からMotoGPクラスへステップアップした。当時は19歳という年齢で、普通なら順に段階を踏むはずのMoto2をスキップする"飛び級"のような昇格をしたこともあって、そのジャンプアップに対しては批判的な意見も少なくなかった。

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