【F1】枯れ葉、ゴミ、仮舗装。世界遺産の難コースをベッテルのみ大歓迎 (5ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki

 観客席に目を向ければ、決勝こそある程度の入場者が見受けられたものの、おおむね観客席も観客エリアも閑散としていた。当初は3万人を見込んでいたという観客席は、チケットセールスの不調を受けて1万8500席にまで減らされたが、それでも埋まりきらなかった。一部の中心部を除けば、首都バクーでさえ雑然とした街並みが広がっており、平均月収が400ユーロ(約4万7000円)前後というアゼルバイジャンの物価からすれば、月収以上の金額であるF1の観戦チケットを購入しようという物好きは滅多にいないだろう。ターゲットはあくまで国外からの観戦客誘致と、アゼルバイジャンの世界的PRだ。

 F1に参入しているメーカーも、アゼルバイジャンはマーケットとして見ていないようで、彼らがゲストをもてなすはずのパドッククラブもこぢんまりとした規模にとどまっていた。

 ただし、アブダビGPも2009年の初開催当初は準備不足が目立ち、「誰がこんなところに観に来るんだ?」と言われたものだった。それでも、コンサートなどのエンターテインメント性とアブダビの持つリゾート的な要素によって、今やパドッククラブのパスは完売し、人気グランプリのひとつとなった。

 バクーが目指しているのもまさにそんな未来であり、十分にその可能性はある。バクーの街も、海外からの観光客を満足させられるだけの要素を備えている。開催初年度の問題点をきちんと見つめ直し、来季に生かすことができれば、シンガポールGPやアブダビGPのように大化けする可能性もあるだろう。

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