ホンダも疑問。ドライバーのモチベーションを奪ったチーム戦略 (4ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki

 TCの改良によって増えたエネルギー回生量を、マクラーレン・ホンダはすべてパフォーマンス優先で使ってしまった。燃費をセーブするための使い方は、一切しなかった。それが結果的にレース途中からドライバーにスロットルを緩めさせ、モチベーションを奪ったのだ。

 チームとしての決定だったとはいえ、長谷川もその点には疑問を感じていた。

「そういう結論になったんですが、僕個人としてはあまり納得していません。やはり追いかけているところで、ドライバーが自分でリフトオフするっていうのは、モチベーション的に相当きついですからね。(燃費側に振って)全開で走っていて、途中でディプロイメントが切れるっていうほうがまだいいんじゃないかなと思います」

 雨が降ればディプロイメントをパフォーマンス側に使う必要は減るため、電気が余る。そうすれば、燃費側に使うこともできる。だから、長谷川は決勝前に雨を期待していたのだ。

 パワーサーキットで苦手だったはずのモントリオールで、マクラーレン・ホンダは予選Q3進出を果たした。

 前述のとおり、今回のTC改良はパワーユニットの出力そのものを向上させるものではないので、予選に関しては従来と変わりない。しかしTCの改良と、ディプロイメントが切れないという進化があったからこそ、決勝でのバトルを考えてウイングを寝かせることなく、予選でのパフォーマンスを優先してダウンフォースをつけることができた。多くのチームがカナダGP専用のリアウイングを持ち込んだり、ウイングレットを取り外したりして空気抵抗の削減に腐心していたのに対し、マクラーレン・ホンダは通常仕様の空力パッケージを持ち込んだどころか、フロントウイングをメルセデスAMG風に進化させてきた。

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