ホンダも疑問。ドライバーの
モチベーションを奪ったチーム戦略

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki

 気温12度という異例の寒さのなか、ホンダの長谷川祐介F1総責任者は、小雨が降っては止むどんよりとしたモントリオールの空を見上げた。

「雨が降ってくれると、いいんですけどね......」

 カナダGP決勝を前に長谷川がそう言ったのは、雨による波乱を期待してのことではなかった。雨が降れば、燃費が楽になるからだった。

ギアボックスのトラブルで早々にリタイアしたジェンソン・バトンギアボックスのトラブルで早々にリタイアしたジェンソン・バトン 加えて昨年のここカナダでは、エネルギー回生量が少ないがためにストレートで120kW(約160馬力)のディプロイメント(エネルギー放出)が切れ、次々とオーバーテイクを許した苦い記憶がある。

 そのカナダGPに、今年のホンダは大幅改良を施したターボチャージャー(TC)を持ち込んできた。

「今回の改良によってMGU-H(※)からのエネルギー回生量を増やせるようにしました。昨年から今年にかけて大きく変わった部分というのはそこだったんですが、サーキットによってはレース中にまだディプロイメントが足りないところがありました。今回の改良で、ほとんどのチームと同じくらいになったと思っています。(1周あたりの)回生量でいえば、昨年に比べて2倍くらいになっていて、これはかなり大きな進歩だと言えます」

※MGU-H=Motor Generator Unit-Heat/排気ガスから熱エネルギーを回生する装置。

 パワーユニットの最大出力が向上するものではないが、決勝でディプロイメントが切れて無様に抜かれるシーンは減る――。話を限りなくシンプルにすればそういうことだが、現実はもっと複雑だ。

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