スーパーフォーミュラ開幕。本気の小林可夢偉「僕は逃げませんよ」 (6ページ目)

  • 米家峰起●取材・文・写真 text & photo by Yoneya Mineoki

 これがレース。可夢偉は言う。

「もちろん、わざとやったわけじゃないし、チーム一丸となって改善していくしかないんです。素人の集まりでやってるレースではないから、チームワークからクルマまですべてをきちんと組み立てていかないと勝てないんですよ。僕らはクルマだけじゃなくて、チームも立て直さんとアカンから......」

 鈴鹿でスーパーフォーミュラの週末を戦った可夢偉には、F1で表彰台争いをしていたころのような張り詰めた空気が漂っていた。不機嫌にもなれば、人を寄せつけないオーラを放つときもある。ヘルメットの奥に光る鋭い眼光――。それは、可夢偉が勝利を争い、本気で戦っている証だ。

「もう1回、出直してきます。でもね、『次が本当の開幕やと思って』なんていうのは一番アカンのですよ。それは、次のレースまでツラい気持ちで過ごすことから逃げてるだけやから。次までの1ヶ月の間、きちんと自分と向き合って戦わないといけないんです。僕は逃げませんよ」

 撤収作業の進むピットガレージで、可夢偉はあえて大きな声で言った。ともに戦い、ともに苦しみから逃げずに向き合わなければならないチームの面々にも聞こえるように......。

 参戦初年度の苦しみを糧(かて)にして、2年目の可夢偉とチーム・ルマンは確実に進歩している。待望の勝利を手に入れるまで、越えるべきハードルはもうあとわずかでしかない。

 次の岡山では、煮えたぎるような熱い思いをコース上の走りで存分に魅せてくれることだろう。

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