ヤマハで3度王者に輝くロレンソが
「ドゥカティ移籍」を決めた心境

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira  竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 2008年にヤマハファクトリーで最高峰クラスを走り始めてから、一貫して同チームに在籍して3回の年間総合優勝を達成し、今年が9シーズン目。その彼も、この5月4日に29歳になる。来年のドゥカティ移籍時には30歳。ロレンソの心中を推測すれば、ジャコモ・アゴスチーニ(MVアグスタ/ヤマハ)やエディ・ローソン(ヤマハ/ホンダ)の時代はともかくとしても、近年のロッシ(ホンダ/ヤマハ)やケーシー・ストーナー(ドゥカティ/ホンダ)の実績はどうしても意識せざるをえない。"レジェンド"と呼ばれる彼らと同様に、複数のメーカーでチャンピオンを獲得するために新たなチャレンジを開始するには、おそらく限界に近い年齢だろう。

 確実に優勝を狙える安定した環境を捨てて、ゼロからの挑戦を開始することは、もちろんリスクが大きい。だが、今回の移籍でメーカーをまたがってチャンピオンを獲得できれば、ライダーとしての紛うかたなき実力を満天下に示すことができる。さらに、ロッシがついに実現できなかったドゥカティ時代(2011年~2012年)のチャンピオン獲得を自分が達成してみせるという意味では、世界に君臨する真の王者としてもはや誰にも文句を言わさずに胸を張ることができる、という野望も視野に入れているだろう。

 ヤマハで勝ち続けることに慣れたロレンソにとって、これらの命題の達成が魅力的な刺激であることは間違いない。

「高いモチベーションを保ち続けること」とロッシが語っていたのは、まさにこういうことなのだろう。

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