小林可夢偉の思い。「F1にいたいんじゃない。レースがしたい」 (4ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki  是枝右恭●撮影 photo by Koreeda Ukyo

――真のレースがやれないなら、無理してまでF1を目指そうとは思わない?

可夢偉 僕が思ってたF1って、優勝を目指して戦うとか、しょぼいチームでも「この人はすごいな」って思われるようなレースをする世界やったんです。でも、今ってそういうことは絶対にあり得ないでしょ?  中団のチームはどれだけ頑張っても勝てないし、チームなりに頑張ればそれでOK。(一発逆転を狙って)人と違うことをやりたいと思っても、それが許されるような世界じゃない。だったら、「僕じゃなくてもいいじゃん」って話になるでしょ? 「自分にしかできない仕事をやりにいく」っていうのが僕の憧れていたF1やったのに、今のF1は「それなりの仕事ができる人なら誰でもいいんじゃないの?」って思ってしまったんです。

――来る2016年シーズンに向けて、どのような展望をもっていますか?

可夢偉 何しよっかなぁ? スーパーGTはたぶんやらないと思います。WEC(世界耐久選手権)もやらないと思う。ひとまず、そういうことにしておいてください(笑)。今はまだフォーミュラカーで戦っていたいんです。だからSFにも取材に来て、いろいろ書いてくださいよ(笑)。

――最後に聞きますが、今、楽しいですか?

可夢偉
 うん。(自分の力でトップ争いをするという)今まで自分のなかでやれなかったこともできてるし、0.1秒を争う研ぎ澄まされた世界で戦える喜びっていうのかな。日本のレースを何も知らない僕が、そういうところにポンと飛び込んで上位で戦えているっていうことは楽しいし、戦ったぶんだけ成果が出るっていうやりがいもあるし。自分がチャレンジした成果が見えるのって、楽しいですよ。(F1のように)それが見えないとつらいけど、このレースを戦ってるドライバーたちはみんなそれを実感してるんじゃないですかね。

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