汚名返上の2016年、ホンダは本当に勝つことができるのか? (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki  桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

「自分たちのパワーユニット(PU)の性能が足りていないことはわかっています。でも、今はどうすることもできない。今年はこのPUで我慢するしかないんです」

 エンジニアもメカニックも、ホンダの面々は悔しそうな表情でそう言って耐えてきた。

 少なくともPUに限って言えば、今回がダメだったから次のレースでは雪辱を......ということはあり得ない。トークン(※)を使った特例開発を投入する以外、前回ダメだったものがいきなり良くなることはないのが、今のF1なのだ。

※パワーユニットの信頼性に問題があった場合、FIAに認められれば改良が許されるが、性能が向上するような改良・開発は認められていない。ただし、「トークン」と呼ばれるポイント制による特例開発だけが認められている。各メーカーは与えられた「トークン」の範囲内で開発箇所を選ぶことができる。

「PUはFIA(国際自動車連盟)によって封印されていて、トラブルが起きても分解することは許されていないし、ファイヤーアップ(始動)することすらできないんです。顕微鏡で覗いて確認するぐらいしかできない。そのつどPUを開けて詳細にチェックできれば、経験が少ない我々にとっては開発や信頼性向上という点で楽になったはずなんですが......」(新井総責任者)

 シーズンが終わり、第16戦・アメリカGP以降の終盤戦に使用した『スペック4』をファクトリーへ戻して分解・解析し、そのデータと経験が2016年型のPU開発に生かされる。2016年に向けて最大で32トークン、PU全体の48%の開発が許されるなかで、ホンダは最大の課題であったERS(エネルギー回生システム)のディプロイメント不足を克服するための改良をはじめ、RA615Hを大幅に進化させる。

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