ホンダが現実を思い知らされた今季F1の「ターニングポイント」 (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki  桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 4月に開発を始めても、実戦投入できるのは10月。シーズンはもう残り数戦という段階になってしまう。加えて、TCとMGU-Hの配置をメルセデスAMGのようにPU前方に据えるならば、車体モノコックの形状変更も必要となる。現在のレギュレーションではモノコックの大幅変更は許されておらず、仮に対処可能だったとしても、残り数戦のために新たなモノコックを設計・製造することは、チームにとって効率的なこととは到底言えなかった。

「ディプロイメント不足の課題は、問題点がわかっていてもシーズン中には対処ができず、厳しい状況のままで戦わざるを得ませんでした。よって、トークンを使ったシーズン中の開発については、ICE(内燃機関エンジン)の出力を上げることに集中するようにしたんです」

 シーズン序盤の第5戦・スペインGPの時点で、信頼性を上げる目的で小改良を重ねてきた『スペック1』のRA615Hは、「ようやく落ち着いて戦え、ドライバーにも良い感触だと言ってもらえるところまでこられた」(新井総責任者)という。

 その後、ホンダはトークンを使った性能アップ目的の特例開発を、第7戦・カナダGP(スペック2)、第11戦・ベルギーGP(スペック3)、第16戦・アメリカGP(スペック4)と投入していった。

 しかし、2トークンを使った『スペック2』は、関係者によれば「ほとんど効果が出なかった」といい、トラブルが相次いだこともあって、新井総責任者も「できることならガラチェン(完全に新設計)したい」と漏らしたほどだった。これがホンダにとっては、2度目の挫折ではなかっただろうか。

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