徹底検証・屈辱の参戦1年目。ホンダのF1復帰は早すぎたのか? (5ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki  桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 ただ、レギュレーション改定から1年遅れで参戦したことについて、「1年も様子見したくせに」と揶揄する声もあるが、それはまったくの見当違い。スタートが遅かっただけに、ライバルよりも短い期間で仕上げねばならず、準備不足のままシーズンに突入してしまったのが不振の原因と言えるだろう。

 実走データも、実走テストもないなかで開発を強いられ、なおかつライバルたちが1年の実戦経験とデータをもとに、48%も改良を許された2015年型パワーユニットと戦わなければならなかった。

「通常の開発を考えれば、2014年の開幕なんてとても間に合わない。2015年だって相当厳しいくらいで、本当なら2016年からの参戦というのが妥当なところ。実際に社内では、『2016年からにすべきだ』という声もありましたから」

 新井総責任者が再三そう繰り返してきたように、たしかに「ホンダのF1復帰」は1年早かったのかもしれない。

 しかし、栃木県の研究所『R&D Sakura』では常に開発が進められてきた。今季型で戦い続けねばならないコース上では苦戦を強いられていても、そのデータをもとに、裏側では進歩が続いていた。

 2016年に向けて、各メーカーのパワーユニットには32トークン(※)、つまり全体の48%を変更することが許される。ホンダはディプロイメント不足の問題を解決すべく、TCとMGU-Hのレイアウト変更を含め、すでに来季用の真新しいパワーユニットの開発を進めている。

※パワーユニットの信頼性に問題があった場合、FIAに認められれば改良が許されるが、性能が向上するような改良・開発は認められていない。ただし、「トークン」と呼ばれるポイント制による特例開発だけが認められている。各メーカーは与えられた「トークン」の範囲内で開発箇所を選ぶことができる。

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