【F1】「伝説のメキシコ」で突きつけられたホンダの厳しい現実 (4ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki  桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

レース早々にリタイアを余儀なくされたアロンソレース早々にリタイアを余儀なくされたアロンソ バトンのマシンではFP-1から高電圧系のセンサーがエラーを検知し、ERS(エネルギー回生システム)の回生がシャットダウン。また、パワーユニットを交換したFP-2(フリー走行2回目)でもエラーが再発した。さらに、FP-2から投入したパワーユニットに信頼性を高めた新型TCが組み込まれていたものの、土曜日にミスファイヤが発生し、FP-1で使用したパワーユニットへと交換を余儀なくされたのである。

 想定外だったのは、温存する予定だったFP-1のパワーユニットに、新型のTCが組み込まれていなかったということだった。ホンダのメカニックたちは急きょ、土曜の予選後にTCとMGU-H(※)を取り外し、ひとつだけ用意してあったスペアの新型TCとMGU-Hを組み込む作業を行なうことになった。

※MGU-H=Motor Generator Unit-Heatの略。排気ガスから熱エネルギーを回生する装置。

 ホンダのメカニックが夜遅くまで作業を行なった甲斐あって、日曜の決勝でバトンはレースを走り切り、14位で完走した。しかし、アロンソ車は1周目で「パワーを失った! レースはおしまいだ!」とピットインして、そのままリタイアとなった。

 日曜の朝の段階で、MGU-Hの回転センサーにトラブルが発生して回転数が不安定になっていることは確認されていた。だが、これを交換している時間は残されておらず、アロンソはそのままレースに臨むしかなかった。

「1〜2周しか走れないかもしれないということもわかっていた。だけど、ここに来てくれた大勢のファンの人たちに対してのリスペクトも込めて、フルアタックしたんだ」(アロンソ)

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