【F1】「伝説のメキシコ」で突きつけられたホンダの厳しい現実 (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki  桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 しかし、気圧の低さは人間の身体だけでなく、F1マシンにも影響を及ぼす。酸素濃度が薄いために空力性能が下がり、エンジンのパワーも低下するのだ。

「マシンには最大限のウイングを付けているけど、気圧が低いからモンツァ(超高速のイタリアGP)レベルのダウンフォースしか生まれない。それにこの気圧の低さで、ターボのコンプレッサーも厳しくなる。その影響は他チームに較べて、僕らのほうが大きいはずだ」

 バトンがそう語るように、ダウンフォースが減るのはどのチームも同じだが、パワーユニットに関してはホンダだけが大きな影響を受けることになった。

「NA(自然吸気)エンジンなら、気圧が20%下がれば、出力も20%下がる。しかし、ターボエンジンは過給を上げ、取り込む空気の量を増やすことでリカバーが可能だ。空気が減った分、ターボでどれだけカバーできるか......。他メーカーのターボは、余力があるからそれもできる。だが、ホンダは普段から規定上限の12万5000rpm(回転毎分)に近いところまで回しているため、それができない」

 車体優先でコンパクトな設計にしたことと、ターボの特性上、「そうならざるを得なかった」のだと、ある関係者は語る。

 ホンダにとってメキシコは、本田宗一郎の大号令のもとに参戦した「第1期・F1活動」において、デビュー11戦目で初優勝を挙げた記念すべき場所である。ちょうど50年前の1965年のメキシコGPで、当時のチーム監督であった中村良夫が元航空機エンジニアだった経験を生かし、高地向けのセッティングを施したことが、他車のエンジンに対して優位をもたらしたという。

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