【F1】「フェラーリ超え」を達成できず、ホンダに迫るタイムリミット (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki  桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

「今回の開発は出力を上げるために、主に燃焼コンセプトを変えるということで、それに関与する部分をちょこちょこと変えた程度でしかなく、まだそれほど大きなものではありません。燃焼室というのはエンジンヘッドとブロックとピストン、すべてがセットになってしまいますから、ひとつ変えるだけで確認項目があまりに多くて時間がすごくかかるんです。全部できていれば7トークンすべてを入れたかったですけど、確認できていないものもあるので、ここで3トークン使うということにしました。フェラーリを上回るという報道もありましたが、今回はそこまで期待はできません。後半戦でもうひと踏ん張り、もうひと山を考えています」

 小雨がパラつき始めたスパ・フランコルシャンの名物コーナー「オー・ルージュ」を歩きながら、新井代表はそう語った。

 超低速1コーナーから下り、高低差70mを一気に駆け上がる壁のようなコーナー。さらにその先には1km以上のロングストレートが待ち受け、1コーナーから2015mにもわたってスロットル全開区間が続く。長い直線を走る間、パワーユニットはブレーキからもターボからも発電ができず、バッテリーからは120kW(約160馬力)のハイブリッドアシストを加えるためにどんどん電気エネルギーが消費されていく。

 最終セクターも同様に全開が続くため、1周7kmのどこかではアシスト量を減らすか、ターボ過給を犠牲にしてMGU-H(※)の発電に回さなければならない。スロットル全開率が70%近くにもなるこのサーキットでは、そういったエネルギーマネージメントが重要になる。このパワーユニットでまだ10戦しか実戦経験のないホンダにとっては、それも気がかりな点のひとつだった。

※MGU-H=Motor Generator Unit-Heat/排気ガスから熱エネルギーを回生する装置。

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