C・ストーナー参戦で今年の鈴鹿8耐は世界中が大注目! (4ページ目)

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira  photo by MOBILITYLAND

 チーム監督の吉川和多留は、最初の8耐合同テストが行なわれた6月上旬に「8耐用マシンのYZF-R1は、MotoGPのプロトタイプマシンよりも限界が低いので、ポルとブラッドリーがマシンの限界を超えたライディングをしてしまうとあっさり転倒……ということにもなりかねない。とはいえ、もともと能力の高いライダーたちだから、そんな心配をするまでもなく、すぐに順応してくれると思います」と話していた。その後、両MotoGPライダーがテストに参加した際のタイムを見る限りでは、吉川が自ら杞憂だと笑っていたとおり、エスパルガロとスミスはマシンのポテンシャルを最大限に引き出す術(すべ)をあっさりとものにしてしまったようだ。

 また、吉川が「限界が低い」というのも、あくまで最先端技術の粋を尽くしたMotoGPプロトタイプマシンと比較したうえでの話だ。8耐用マシンのベースになっている今年型の量産市販車YZF-R1は、開発初期からMotoGP担当技術者も加わって積極的な技術転用がなされており、元GPライダーの中野真矢がこのマシンを試乗した際には「どこまでもブレーキングで深く突っ込んでいけるので驚いた」と、その素性の良さを賞賛している。

 今年の鈴鹿8耐は、年若きレジェンドのストーナーを擁するMuSASHi RT HARC-PRO.と、現役MotoGPライダーと全日本チャンピオンを配したYAMAHA FACTORY RACING TEAMの勝負が最大の注目だ。だが、この2チーム以外にも強力な布陣で挑む陣営は多く、最強と予想される両チームをあっさり凌駕してしまうことも充分にあり得る。それが、鈴鹿8耐というレースの不思議なところでもあり、大きな魅力でもある。事前には誰も想像できなかった事態が次々と発生し、そのような艱難辛苦(かんなんしんく)をチームと選手が乗り越えていこうとする姿があるからこそ、8耐はいつも人々を魅了し続ける。

4 / 4

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る