【エアレース】室屋義秀が強くなったからこそ味わう「勝つことの難しさ」 (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki

 いずれにしてもホールはラウンド・オブ・8で、まさかの失速。楽勝ムードから一転、優勝はおろか、今季初めて表彰台さえも逃す結果に終わったのである。

©Redbull©Redbull だが、エアレースの難しさを痛感させられていたのは、決してホールだけではないだろう。日本の室屋義秀もまた、そのひとりだったに違いない。

 今回のレースを前に、室屋は新たなクーリング(エンジン冷却)システムを導入した。機体前部にあるエンジンを覆うカウリングの左側面に、コックピットからの操作で開閉できる扉のようなものをつけ、レース以外のときにはそこを開けて空気の流れをよりよくし、エンジンを冷やそうというものだ。

 部品の手配などに時間がかかり、実際に新システムを搭載して飛ぶのは、予選前々日が初めてとなったが、テストを終えた室屋は「前回(第3戦)はエンジンがオーバーヒート気味だったけど、今回はよさそう。レース当日は36度まで気温が上がるという予報もあるが、気にしなくて大丈夫だと思う」と語り、機体の改良に手応えをうかがわせた。

 事実、室屋はトレーニングセッションから好調なフライトを披露していた。迎えた7月4日の予選でも、1本目のフライトでホールに次ぐ2位のタイムを記録すると、2本目は「1本目にタイムが出たので無理やり突っ込んでみた」と、リスクを高めて勝負したときに、どれだけタイムが縮まるのかをテストする余裕まで見せた。

「昨日までのトレーニングで分析していたことがだいたい全部出せて、いい感じで飛べた。たぶんこれ以上はできないんじゃないかという、限界に近いベストタイムが出た」

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