【F1】メルセデスAMGを猛追。フェラーリはどこが進化した? (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 そしてアリバベーネは、ベッテルがフロントウイングを痛めて余分なピットストップをしていなかったら、「2台ともにロズベルグを打ち負かして表彰台に上がっていただろう」と言う。

 そんなフェラーリが、今季メルセデスAMGを猛追できているのは、パワーユニットの進歩が大きな役割を果たしていると見られている。

 昨年はメルセデスAMGに比べてパワー不足が明らかだった。そのため、ラジエターやインタークーラーを大型化してパワーの向上を図ってきた。サイドポッドは大柄になり空力性能はやや失われることになったのだが、それよりもパワー向上と制御ソフトウェアの熟成による効率化を推し進めたのだ。

 同時にタイヤへの優しさにも注力した。これはサスペンションなどメカニカル面の性能アップと、リアタイヤに直結するパワーユニットの制御性能の向上が大きい。昨年11月の最終戦直後に行なわれたUAEのアブダビ合同テストで、彼らはパワーユニット制御ソフトウェアのテストに専念していた。

 昨年までのフェラーリは、空力専門家のジェームズ・アリソンがテクニカルディレクターを務めていたこともあって、空力が最優先される組織だった。つまり、開発リソースやテストは空力を最優先に割り振られてほかの開発が滞(とどこお)り、「木を見て森を見ず」という言葉がそのまま当てはまるような状態。組織としての効率を考えた統率が取れていなかったせいで、開発の方向性が迷走することも少なくなかった。

 しかし、昨年12月からアリバベーネが代表に就き、「指揮系統の効率化」を最優先に掲げて組織を見直し、フェラーリは目的意識をはっきりと持った組織へと生まれ変わった。

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