F1に乗れない小林可夢偉の2015年。「今、やりたいことがある」 (4ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 みんな問題点は分かってるんですよ。でも、それをどうしたらいいのか分からないだけやと思うし、日本企業っていうのは難しい立場にあるんやなとも思う。何かきっかけがあって、一気に加速すればいいなと思うから、できる限りのことはやっていきたい」

 可夢偉は「国内のモータースポーツを盛り上げるため」としか言わないが、フォーミュラカーレースを盛り上げたいという思いの背景には、これまで自分が経験してきた苦労がある。

 日本ではレースの「社会的地位」が高いとは言えない。だからこそ、自動車関連企業以外の会社は積極的にスポンサー活動をしない。そのため、可夢偉もレース活動を続けるうえで数々の苦難にぶち当たってきた。これから世界に挑戦しようという若いドライバーのためにも、そこを打破しておきたい。それが可夢偉の思いだ。

「モータースポーツの社会的地位が向上すれば、投資をしようというスポンサーも増えてくるだろうし、若いドライバーがチャンスをつかめる機会も増える。日本は自動車大国なのに、ドイツみたいに国中がモータースポーツを認知している感じではなくて、自動車メーカーもF1に対するスタンスがドイツほど熱心ではないと思うんです。そういうことも含めて、モータースポーツに対する世間一般の目を変えていくという点で、貢献できればいいなと思います」

 可夢偉は随分大人になった。自身が国内レースに復帰し、自分目当てにサーキットへ見に来てもらいたいと語ることは、ある意味、自分が"客寄せパンダ"になることを受け入れるということだ。以前の可夢偉なら、コース外で自分を投げ売りすることは拒絶していたはずだ。

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