【F1】中国GP完走で前進も、ホンダ総責任者が喜べないワケ

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

「ウインターテストで十分に走り込めなかったし、開幕2戦でリタイアもあった。フェルナンドにとって実質的に今回が初めてのロングスティントだった。他チームはテストで膨大な距離を走り込んでセットアップ作業を煮詰めてきているけど、我々はまだ学習の途中というわけさ。そういう意味ではレース毎に前進しているし、これからだね」(マット・モリス/エンジニアリングディレクター)

 今季初の完走を果たしたアロンソに、笑顔はなかった。レース後のエンジニアミーティングが終わった後も、ミーティングルームに残ってエンジニアと疑問点を議論し続けていた。

「(成功を収めるまでには)きっと長い時間がかかるだろう。まだ開幕から数戦の段階でしかない。ただ、最後尾で周回遅れになるようなレースはもうそれほど続かないだろう。もう少し前でレースを楽しめるようになると思っているよ」(アロンソ)

 2台完走。パワーユニットの信頼性については、これで一定の目処(めど)が立ったと新井は語る。ここからがようやく、パフォーマンスを追求する本来の戦いの始まりだ。

「ウインターテストがようやく終わったという感じですかね。ようやくこれから仕事に入るかな、という感じです」

 そう明言する新井に、中国GPで突き付けられたトップと約2秒という差の理由はどこにあるのかと問うと、パワーユニットの出力差を一番に挙げた。

「どこかの報道にマクラーレン・ホンダはメルセデスAMGより100馬力劣っているって書かれていましたよね(苦笑)。他メーカーがどのくらいパワーが出ているのかは分からないけど、そう書かれたらそれを目標にするしかないですよね。我々は技術の方向性は間違っていないと思ってやっているし、まったく疑っていないんです。絶対にコンペティティブ(互角に戦えるよう)になると自信を持っています。細かなところの積み重ねで、100馬力アップを目指すだけです」

 彼らは今、ようやく長い旅路のスタート地点に立ったのだ。

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