課題山積。マクラーレン・ホンダは無事に開幕を迎えられるのか?

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki photo by Yoneya Mineoki

 レーシングディレクターのエリック・ブリエも「1日の想定周回数という点では50%しかこなせていないし、残りの日数ですべての確認項目にチェックを入れられるかどうかは分からない」と、状況が厳しいことを率直に語った。パワーユニットのトラブルで走行時間を失い、テストがスムーズに進められていないことに対する焦りが、チーム内にあることがヒシヒシと感じられた。

 アロンソの事故後、チームは一切の取材対応を行なわず、公式声明の発表のみ。テスト4日間のうち2日間が取材拒否という異常事態が、マクラーレン・ホンダの置かれた厳しい状況を物語っている。

 それでも、あるルノーユーザーチームのエンジニアは、ホンダのパワーユニットについて、「走行距離の面でも速さの面でも、昨年のルノー勢に較べれば圧倒的に順調に走行ができている。初年度であれだけ走れているのはすごい」と評価する。

ポジティブな発言を続けるホンダF1の総責任者・新井康久ポジティブな発言を続けるホンダF1の総責任者・新井康久 そして、「開幕戦に間に合わせる自信はある」と、ホンダ側の総責任者である新井は、前向きな発言を続ける。

 まだ車体側もパワーユニット側もセッティング作業を行なっておらず、「フルパワーにはほど遠い状態」(新井)だが、その状態でトップから大きく遅れていないタイムを並べているだけに、ポテンシャルはある。ただし、開幕前のテストは残すところ4日間。開幕戦のオーストラリアGP(3月16日決勝)までのわずかな時間で、100%の準備をすることは容易ではない。

「かなり頑張ってきたという自負はあるし、どんな時でも前を向いて力強く語らないといけない」

 普段は温厚で柔和な新井の語り口は、世間の人々がイメージする情熱的な“ホンダマン”らしさは感じられない。しかし、その根底にはホンダらしい男気が流れている。マクラーレン・ホンダが、MP4-30とRA615Hが秘めたポテンシャルを可能な限り引き出していくことに期待したい。

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