【F1】どこが優位?開幕前テストから読み解く各チームの現状 (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 フェラーリは昨年末にチーム代表が替わり、大規模な組織改革を断行した。本社のあるイタリアのマラネロでは、長らく権威を振るってきたルカ・ディ・モンテゼーモロ会長が去り、変革の時を迎えている。

 それだけに初回のテストで明確な結果を示すことが必要で、今回のトップタイム連発は"パフォーマンス"に過ぎないという声もパドックでは根強かった。ただし、昨年1993年以来という無勝利のシーズンを送ってしまったフェラーリには、やらなければならないことが多い。チーム上層部の顔色をうかがうためのパフォーマンスに割く時間はないはずだ。

「この時期には、まだラップタイムは重要ではない。もちろん上位にいるにこしたことはないけど、それよりも周回数の方が重要だよ。その点ではメルセデスAMGの方が格段に多く走り込んでいるわけで、僕らにはまだまだ進歩の余地がある」

 ベッテルがそう語るように、圧巻だったのは昨年のチャンピオンチームであるメルセデスAMGの走行距離だった。ラップタイムは3、4番手と目立ったものではなかったが、初日157周、2日目91周、3日目151周、4日目117周と、8チーム中最多周回数を走り込んだのだ。

 昨年圧倒的な速さを誇った彼らは、「あらゆるエリアを進化させることを念頭に開発した」(エグゼクティブディレクターのパディ・ロウ)正常進化型マシン「F1 W06」の速さをあらためて確認する必要などなく、今回のテストを徹底的に走り込んでトラブルを潰していくことに充てていた。

「去年の僕らの唯一の弱点は信頼性だった。今年はそれを克服するためにこういう手段をとったんだ。次のバルセロナでのテストでトラブルが見つかっても、開幕戦までに対策が間に合わない可能性だってある。だから、ヘレスでトラブルを出し尽くすことが重要と判断したんだ」

 初日だけで約690kmを走ったニコ・ロズベルグはこともなげにそう語る。彼らはすでにイギリスでシェイクダウン作業を終えてきており、自信のほどがうかがえた。

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