マクラーレン・ホンダ、トラブル続きも「大化けの可能性」 (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki photo by Getty Images

「いろんなことが起きています。予想していたことではありますけどね」

 ホンダのF1プロジェクト総責任者を務める新井康久は、苦笑いをしながらそう言った。イギリスのシルバーストンでシェイクダウンを終えたテスト車両「MP4-29H/1X1」は、その走行時にもさまざまな問題が起きていた。

 このマシンには、9月から栃木の研究所「HRD Sakura」でベンチテストが行なわれてきた"バージョン3"のホンダ製パワーユニットが搭載されていた。来季型マシンを完成させる前に、実走状態でモーターやハーネス(配線類)のノイズなどの影響を確認しておきたいというのが、この車両制作とテストの理由だった。

 その意味では、こうした細かなトラブルが多発するのも想定の範囲内というわけだ。結局、MP4-29H/1X1は午後3時10分にようやくコースインを果たした。ゆっくりと1周のインストレーションチェックを行ない、再びピットに戻ってくる。ガレージ内で各部のチェックを終えた後、午後4時にコースへと送り出され、ピットウォールには「L2」と掲げられたサインボードが用意されていた。

 しかしマシンは、バックストレートエンドで動力を失い、惰性でピットに戻ることも叶わずコース上で止まってしまった。マシンはガレージまでレッカーされて約1時間後に再び1周のチェック走行を行なったが、すでに残り時間は30分を切っており、この日のセッションはこれで終了となった。

 それでもまだ、新井の表情には余裕があった。

「こういう事態も予想していましたし、原因も特定できています。火を入れる前の段階でチェックをたくさんしていて、次から次へと『あ、これもチェックしなきゃ! これも確認しなきゃ!』とやっていたら時間がかかって、『昼になっちゃった』という感じです。ハードウェアが壊れたというわけではなくて、コントロールデータが自分たちの想定していた数値と違ったところが出てきたということですね。『こういう数値になっちゃうの? じゃあ一度ハーネスを外して確認してみよう』といったようなことの繰り返しで、何かを変えているわけではないんですけどね」

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