【F1】可夢偉の本心。「もしかしたらこれで最後なんかなぁ」 (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 現実的な可能性として、可夢偉の脳裏に浮かんでいたのはそんな考えだった。傍目から見れば、ボロボロのクルマとチームで走ったとしても限界は見えている、そんなレースに何の価値があるのかと言われるかもしれない。しかし、可夢偉にとって、この最終戦は大切な1戦だった。

「自分の全レース人生を賭けて、集大成として臨みたい」

 可夢偉はそう言った。

「今の状況では来年F1でレースをすることは厳しいと思うし、来年走れなかったら再来年はもう30歳でしょ? 10代の若い子が走ってるっていうのに、30歳のオッサンがF1に戻ってくるって、よっぽど何か大きなものがないと難しいでしょ? だから、もしかしたらこれがF1で最後のレースになるかもしれないって思うし、ここで走るチャンスがあるならこれは思う存分レースしておくべきかなって思ったんですよね」

 思い返せば今年の初め、1年間の留年を経てF1に戻ってきた可夢偉は「とにかく楽しみたい」と語った。「(前オーナーの)トニー・フェルナンデスがくれたチャンスを生かし、チームに貢献することで自分の力を証明したい。これが最後のチャンスだと思う」と。

 そしてその言葉どおり、チームの牽引役として自らの経験を総動員してこのチームを変えようと必死でもがいてきた。

 2014年のケータハムの船出は、決して順調ではなかった。ルノーのパワーユニットの開発がうまくいかない影響で満足にテストができず、マシンのデザインもややコンサバティブ過ぎた。

 しかし、可夢偉が先頭に立って開発の方向性を示し、チームの運営面にもアドバイスをして改善を進め、シーズン序盤戦は、マルシアはおろかザウバーとさえ戦えるほどのポテンシャルを見せていたのだ。

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