【F1】重圧との戦い。ハミルトン、王座獲得の舞台裏 (5ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 スタートで首位に立ったハミルトンは、ロズベルグを引き離していった。

 ロズベルグはタイヤをいたわりピットストップを遅らせて逆転を狙う作戦に出たが、パワーユニットのERS(エネルギー回生システム)が不調になり、パワーが失われるとともに、ERSと直結しているリアブレーキの安定性も失った。レース終盤には、走っているのがやっとの状態で、エンジニアはリタイアを勧めたが、ロズベルグは「いや、最後まで走りたいんだ」と言って14位でチェッカーフラッグを受けた。

「ものすごくガッカリしているよ。勝つチャンスはあったからね。でも今日のレースがどうだったとしてもルイスがタイトルを獲ったことには変わりない。彼にはチャンピオンの資格がある。彼が今年のベストドライバーであり、僕よりも少しだけよかったということだ。僕らは素晴らしいバトルを繰り広げてきた。緊迫した1年だったけど、最高だった」(ロズベルグ)

 ハミルトンはトップでチェッカーを受け、アブダビGPを制すると同時に6年ぶり2度目の世界チャンピオンに輝いた。予選トップの回数こそロズベルグが12対7で上回ったが、勝利数ではハミルトンが11勝を挙げて2位のロズベルグに67ポイント差を付けた。

 バイザーの下に溢れる涙が、これまでハミルトンが背負ってきた重圧と乗り越えてきた試練の大きさ、そして支えてくれた家族への感謝を物語っていた。

「身体から魂が抜けるような気分だよ。言葉にするのはとても難しい。今まで生きてきた中で最高の気分だ。人生最良の日だよ。それもすべて家族や周りのみんなのおかげだ。みんなに感謝したい」

 勝つべき者が勝ち、頂点に立った。こうして2014年シーズンはフィナーレを迎えた。

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