【F1】重圧との戦い。ハミルトン、王座獲得の舞台裏 (4ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 8月のベルギーGPでハミルトンとロズベルグが接触し、チーム内には険悪な空気が漂った。しかし、そこから立ち直って次のイタリアGPから5連勝を挙げたのは、ハミルトンが後ろ向きの思考を振り払うことができたからだった。

「スパ(ベルギーGP)は今年最悪の場面のひとつだった。数年前の僕ならあの難しい状況に直面して、ポジティブじゃない考え方に支配されていたかもしれない。でも、僕も成長したんだ。次のイタリアGP以降、違うアプローチで臨むことができた。それが勝利をつかみ獲る要因になった」

 実際、イギリスGPの雨の予選で6位に沈み、心が折れそうになりながらも、家族の支えで決勝では強い心を取り戻して逆転優勝を果たした。子どもの頃から支えてくれた家族、とりわけ二人三脚でレースをしてきた父との語らいが、彼に強さを与えてくれた――。
総合優勝を決め、国旗を手に喜びを全身で表現するハミルトン総合優勝を決め、国旗を手に喜びを全身で表現するハミルトン そして迎えたアブダビGP決勝の朝、来ないはずだったハミルトンの家族とガールフレンドがアブダビを訪れて、サプライズを仕掛けた。

「彼らの献身のおかげで僕はレースをすることができているし、今の僕がある。すべては彼らのおかげだ。だから、もしも今日ここに家族みんなでいられなかったら、それは正しいことではなかっただろう」

 勝利にかけるポジティブな情熱を取り戻したハミルトンは、タイトル争いを忘れてこのレースでの勝利だけを追い求めた。

「レース前に(スタートの)クラッチ調整をやるエンジニアが僕の部屋に来て、『今日はどうアプローチしたい?』と聞いたんだ。僕は『いつも通りでいい、いつも以上でも以下でもなく、いつもの通りだ』と答えた。その結果、今までで最高のスタートになったね」

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