【F1】ついに走り出したマクラーレン・ホンダ。開発は加速する (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki

 ホンダ側は、長らく事前実走テストの可能性を否定してきた。それでもこの実走テストに踏み切ったのには、マクラーレン側からの強い要望があったものと思われる。今季開幕前のテスト初日、マクラーレンはパワーユニットに火が入れられずに丸1日を棒に振ってしまった苦い経験があったからだ。

「実際にパワーユニットをクルマに積んでハーネスを這わせると、いろんなノイズを拾ってしまってきちんと作動しなかったりするわけです。今年の開幕前のヘレス合同テストがまさにそうでしたよね。そういうことが起きないことを確認したい。

 ベンチテストでは、レイアウトはそれほど細かく絞り込んだ状態ではありませんし、電源も外部からつないだ状態です。それが、クルマに載せた状態になると、ノイズの影響などでECU(電子制御装置)が起動しないなんていうこともあります。たとえば、MGU-H()のモーターが作動したらものすごくノイズが発生するわけですが、その影響もチェックできるし、モーターをコントロールするコントローラーがスイッチングを始めれば、余計なパルスが乗ってエンジンのコントローラーがダメになってしまうとか、そういうことをチェックしたいわけです。
※MGU-H =Motor Generator Unit - Heat/排気ガスから熱エネルギーを回生する装置

 それから、ソフトウェアが規定通りに動くかどうかということも、実際のテスト本番が始まる前にどこかで確認しておかないと、本番仕様のパワーユニットを2015年型マシンに搭載してテストを迎えたときに不具合が起きないとも限りませんからね」

 同じメルセデスAMG製パワーユニットを積むチームが4チームあったおかげで、十分なデータ収集と熟成が進められた今季と異なり、2015年に向けた開幕前テストではマクラーレン・ホンダは1チーム1台のみでテストを行なわなければならない。

 もし前述のようなトラブルがパワーユニットに出れば、たった12日間しかない貴重なテストの時間を失ってしまうことになる。パワーユニットだけでなく空力面やメカニカル面のテストも進めなければならないことを考えると、そのリスクを最小限に抑えるために、年内にシステムチェックを行なっておきたいというのがマクラーレン側の要望だったわけだ。 

2 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る