【F1】メルセデスの僚友対決。王座に就くのはどちらか? (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

「僕は、もっと成長しなければならないということをオースティンで学んだ。決勝が始まってもリズムをつかめなくて、取り戻すのに時間がかかってしまった。だから今週は、フリー走行で燃料をたくさん積んでレースに近い状態で練習走行をした。土曜朝にもロングランをやったくらいだ。それが役に立ったと思うし、気持ち良く走れている」

 予選でポールポジションを獲った後、ロズベルグはそう明かした。

 金曜午後の走行を終えた後、ロズベルグの右フロントタイヤには他の誰よりも大きなブリスターが発生していた。それは彼がそれだけ決勝を見据えたロングランに注力していた証だった。

 ロズベルグは土曜朝のFP-3(フリー走行3回目)でもロングランを2本こなしていた。ロングランは時間に余裕がある金曜午後のFP-2で行なうのが定石で、盤石のシーズンを過ごすメルセデスAMGが土曜にロングランを実施するのは極めて稀なことだ。しかし、チームはロズベルグのたっての希望でこのようなプログラムを実行した。それも、決勝を想定した100kg近い燃料を搭載しての走行だ。クルマが10kg重くなればラップタイムが0.3秒遅くなると言われるほど、予選と決勝ではマシンの挙動が異なる。ロズベルグは決勝と同じ状態のマシンを熟知しておきたかったのだ。

 決勝で2番グリッドについたハミルトンは、決勝での逆転劇が簡単ではないことを知っていた。「同じクルマでは追い抜きはちょっとやそっとではできない。それに、ニコはロングランのペースがすごく良かったしね」。長いストレートがありオーバーテイクが頻発するインテルラゴスとはいえ、チームメイトを追い抜くことは、タイヤの状態がよほど違わない限り難しい。

 さらに現在、メルセデスAMGはふたりのドライバーに異なる戦略を採らせない方針をとっている。ベルギーGPでチームメイト同士が接触して勝利を失って以来、メルセデスAMGはふたりに自由にバトルさせるというそれまでの方針を放棄したのだ。戦略が異なればタイヤの状態が異なり、それぞれの思惑も異なるため、有利不利の差も大きくなりやすく、戦略の善し悪しで勝敗が分かれることになる。しかし同じ戦略であれば、ピットインのタイミングはほぼ同じになり、前を走っているドライバーに優先権が与えられる。すると、後ろを走るドライバーは不利にならざるを得ない。

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