【F1】ロシアGPでリタイアした小林可夢偉の本音 (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

「私は3週間前からファクトリーにいたが、以前と何も変わっていない。ノンストップで稼働しているよ。毎日稼働しているし、何も問題はない」(チーム運営補佐役のイアン・フィリップス)

 だが、ロシアGPの週末にも新型フロントウイングはおろかベルギーGPスペックのリアカウルも届けられず、可夢偉は日本GPと同様、チームメイトのマーカス・エリクソンに対して0.7秒遅いマシンで走ることを余儀なくされた。さらにFP-1のシートをロベルト・メリに譲り、ハンディだらけで予選に臨んだ。それでもエリクソンと0.5秒差のタイムを刻んだのは上出来と言えた。加えて言えば、ギアボックスのクイックシフトが機能せずに0.3秒を失ってもいたことを考えれば、いかに可夢偉がその腕でタイムを稼いでいたかが分かる。

 チーム運営資金をエリクソンの持ち込み資金に頼っている以上、彼に最新スペックのマシンが与えられることは受け入れざるを得ない。しかし、同じものが可夢偉に与えられていれば、おそらくザウバーやロータスに迫る走りを見せていたことだろう。

「走行時間がほとんどなかったことを考えると、悪くない結果だとは思います。まだコースを理解し切れてないから、攻め切れてないんですよね。どの走り方が速いのかっていうのをまだ試行錯誤しているんです。クルマがチームメイトとあまりに違うんで、データの比較ができないっていうのもありますしね」

 苦しい中でも、可夢偉は戦った。周りと違うミディアムタイヤを履いてスタートし、1ストップ作戦でなんとか互角の戦いを演じようとしていた。

「可夢偉、(レース戦略は)プランBにしよう。(エイドリアン・)スーティル(ザウバー)と戦えているぞ」

 レースエンジニアのティム・ライトが無線でそう伝えていた矢先、可夢偉のレースは突然終わりを迎えた。

 21周目に通常のタイヤ交換だと思ってピットに飛び込むと、ガレージの前にはタイヤは用意されていなかった。エンジンを切るように指示され、マシンはガレージに押し戻された。

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