【F1】4度目の日本GPで可夢偉が伝えたかった思い
「自分の力は出し切れたと思います。もうちょっと戦いたかったし、最後の(タイヤ交換のギャンブルの)チャンスを生かせなかったのが悔しいですね。週末全体の流れが、今シーズンで一番苦しかった。でも、この難しいコンディションの中で完走ができたのはよかったと思います」
耳にしたばかりのビアンキの容体を気にしながらも、可夢偉はそう言った。
しっかりと完走をし、チェッカーを受けた後はゆっくりと手を振って走った。最後のラップはセーフティカー先導中の赤旗中断というかたちでの1周になったが、可夢偉は観客席に向けて手を振ることを忘れてはいなかった。
「軽く振りましたよ、これでレースは終わりかなと思ったんで。あまり振りすぎて目立つとヤバいなと思いながら(苦笑)。でもファンの人たちが手を振ってくれているのも見えました。僕がコーナーを回るたびに旗を振ってくれているのが見えたし、それが力になって走れました。結果につなげられなかったのは残念ですけど、ファンの人たちの気持ちはしっかり伝わりました」
運命の鈴鹿で、可夢偉は過酷な運命と闘った。そしてすべてを出し切った。
「2009年にここで初めて(F1公式セッションで)走ったのも運命的なストーリーやったし、あの時も雨でしたねぇ……。この鈴鹿から始まって、ここで終わるっていうことはやめようって冗談で言うてたんです(苦笑)」
次のロシアGP以降の出場もまだ未確定の状態だが、このまま終わるつもりはない。F1での小林可夢偉のストーリーは、まだ終わらせたくない。ファンに見守られながら4度目の鈴鹿を戦って、可夢偉はそう強く心に刻んだはずだ。
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