【F1】4度目の日本GPで可夢偉が伝えたかった思い (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 リアカウルやフロアが破損しており、スペアがなかったために旧型のパーツへと交換せざるを得なかったのだ。結局のところ、ノーズ以外は夏休み明けのアップデートが施される以前の状態にまで戻さなければならなくなった。

 加えて、この日本GPに用意された新型フロントウイングはたったひとつしかなく、これはマーカス・エリクソンのマシンに装着された。彼の持ち込み資金がチーム運営の屋台骨を支えていることを鑑(かんが)みれば、それは仕方のないことだったのかもしれない。いずれにしても、可夢偉のマシンはエリクソンのそれに比べてデータ上で0.7〜0.8秒はパフォーマンスの劣るものになってしまった。

 さらに、可夢偉はFP-3の最後にブレーキトラブルに見舞われており、一度もオプションタイヤを試すことなく予選に臨まなければならなかった。もちろん、それに合わせたセットアップなどできているはずもなかった。

「きちんと練習走行をして、セッティングをして、オプションタイヤの感触も試せていたら、もうちょっとタイムは上げられたと思いますね。(新型フロントウイングを含めた)最高のパッケージを使えていれば、タイム的にはロータスと戦えたんじゃないかな」

 エリクソンに0.2秒先行されて21位で予選を終えた可夢偉は、そう言った。金曜のクラッシュに始まり、可夢偉の日本GPは最悪の流れへと傾いてしまっていた。53周の決勝も、大きなハンディを背負ったままのマシンで走らなければならないのだ。

「『16位を目指します』とか『17位を目指します』なんて言うてもしょうがないじゃないですか? だから、完走を目指して、最後は“楽しむこと”を一番に考えてレースをしたいと思います」

 これまでに走った3回全ての日本GPで何らかの見せ場を作ってきた可夢偉は、4度目の鈴鹿に向けてそう言った。※2010年7位入賞。2011年13位完走。2012年3位表彰台。

 午後3時に決勝が始まると、雨脚は気まぐれに強くなったり弱くなったりを繰り返した。セーフティカー先導によるスタートから赤旗中断を挟み、その後は小康状態の中でレースが再開され、路面は少しずつ乾いていった。

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