【F1】4度目の日本GPで可夢偉が伝えたかった思い
それは可夢偉の本来の思いとは違う。ドライバーは走りでファンを魅了し、結果で声援に応えるべきだというのが本心だ。しかし、今のケータハムのマシンでは、それは不可能と言わざるを得ない。だからこそ可夢偉は、少しでもファンに恩返しをすべくレース以外でも最大限の努力を惜しまなかった。
「現状で(他チームと)戦えるようなクルマではないんで、どこまでやれるかっていうのはありますけど、できるだけの走りはしたいし、最後まで走り切って、チェッカーを受けてからできるだけゆっくり走って頑張って観客席の皆さんに手を振りたいと思います」
だが、可夢偉にとって4度目の鈴鹿で立てていたプランは、金曜から文字どおり音を立てて崩れていった。
FP-1(金曜のフリー走行)を新人のロベルト・メリに譲り、午後のFP-2でいざこれからという時に、S字の入口でクラッシュ。走り始めてからわずか3周目の出来事だった。
「僕もよく分からないままクルマがオーバーステアになって反対を向いて、そのままコントロールできずにタイヤバリアに突っ込んでしまいました。それまでの2周でクルマ自体はアンダー気味だったんで、なぜあそこで突然オーバーが出たのか、ちょっと分からないです......」
可夢偉の顔には、明らかに狼狽の表情が浮かんでいた。今年の鈴鹿はクラッシュが相次いだ。選手権リーダーのルイス・ハミルトン(メルセデスAMG)や3勝を挙げているダニエル・リカルド(レッドブル)でさえ、コーナーで挙動を乱してタイヤバリアの餌食になった。
風が強く不安定で、マシンが追い風を受けてしばしば空力的に揺さぶられたこともその原因のひとつだったようだ。可夢偉のクラッシュもそれに起因するものだったのかもしれず、だとすればそれは不運としか言いようのない事故だった。
タイヤバリアに当たった左リア以外はサスペンションも壊れておらず、一見するとマシンのダメージはさほど大きくなさそうだった。だが、ガレージに戻ってきたマシンをメカニックたちが調べてみると、このクラッシュの代償は予想以上に大きかった。
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