【F1】世界が認める日本人エンジニア。小松礼雄の思考方法 (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 そんな中でも、小松とグロージャンは腐らずに必死に戦っている。

 チームメイトのパストール・マルドナドは荒れたレースが続いており、いまだノーポイント。しかしグロージャンは、かつて非難を受けた荒っぽい走りが嘘のように堅実で、チームメイトを上回る速さを見せ、マシンで優っているトロロッソ勢と同等の8ポイントを稼いでいる。

「ロマンは去年の後半戦に成長したあの積み重ねがあったからこそ、今年どんなに酷くてもきちんと戦って、予選でもチームメイトに対してほとんど勝ってるじゃないですか? パストールなんてクラッシュしまくっているけど、 2年前のロマンだったら、今のパストールと同じようになっていたと思います」

 グロージャンをそれだけ成長させたのも小松なら、目の前の苦境のなかで耐え忍び、堅実に戦わせているのも小松だ。高校の時は数学が苦手で英語もまったくできなかったというのに、F1の世界を目指してイギリスの大学に飛び込み、ここまで叩き上げてきた小松だからこそ、今の苦境にも真摯に向き合い、チームを鼓舞し、自分たちにやれるだけのことを貫き通すことができるのかもしれない。

「優勝でも20位でも、仕事の量は変わらないんですよ。みんな許された時間の中で最大限に働いていますから。マルシアの仕事量がメルセデスAMGより少ないわけでもない。とはいえウチは、開幕戦は水曜の夜は徹夜で、金曜も1時間しか寝られませんでした。グランプリでそんなのは初めてでしたね」

 超高速のイタリアGPでは、ザウバーに先を行かれ、同じルノー製パワーユニットを積むケータハムからの突き上げをくらうほど苦戦を強いられた。それは空力パッケージの不出来ゆえの結果だったが、昨シーズン後半戦に優勝争いを繰り広げていたチームとしては屈辱的な週末だったと言うしかなかった。

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