【MotoGP】12戦11勝。若き王者マルケスの勢いは止まらず

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 本人もこの低迷にはさすがに頭を抱えたようだが、そこは二度の世界タイトルを獲得した技倆とヤマハファクトリーチームの豊富な引き出しで対応し、土曜の予選は3番手。日曜の決勝でも、序盤からマルケスを背後に従えてトップを走り続け、マルケスがアタックを開始した中盤以降でも、ラインを交錯させて激しいバトルを繰り広げた。

 何度かマシンが接触するような激しい駆け引きを経て、最後はマルケスがコンマ数秒の優位をつかんでレースを支配し、今シーズン12戦中11勝目を達成した。

「今日はこんなレース展開になるとは予想していなかった。僕は土曜の午後や今朝のウォームアップと同じようなペースで走行できたけれども、決勝レースではホルヘが序盤からハイペースで飛ばしてきた。金曜と土曜よりも暖かくなった日曜の温度条件で、ヤマハのふたり(ロレンソとロッシ)がいいリズムで走っていた。最後はホルヘと戦って、25ポイントを獲得できたのでよかった。(勝てなかった)ブルノのあと、表彰台の頂点に戻れてうれしいよ」

 そう話す口ぶりや全20周回のレースの印象からは、最初から最後まで両者が無我夢中で戦い抜いた熱戦のようにも見えるのだが、優勝を収めた当の本人、マルケスにしてみれば、沈着冷静に状況に対応し、狙いどおりのタイミングで勝負を仕掛けてつかんだ優勝、というのが真相のようだ。

 上記の言葉に続き、「レースでは序盤からいい調子で走れたけれども、最後まで様子を見ながら戦略的に走って、中盤以降から攻めるようにしたんだ。その後、一度抜き返されて自分もミスをしたけど、18周目に再度自分が抜き返してからは少し距離を開くことができた」というコメントにも、それははっきりと現れている。

 マルケスとロレンソは、第6戦イタリアGPでも今回と似たような接近戦を繰り広げ、最後はマルケスが勝利を収めた。

 そのときのバトルと比較をすると「ムジェロのときの方が難しかった。あのときは最初から最後までずっと100%で走り続けたけれども、今回は自分の方が速そうだったので、序盤は後ろにつけて走っていたんだ」とレース展開を振り返りつつ、「たしかにムジェロのほうが大変だったけど、ラクなレースなんてないよ。今日も全力で走った。このコースはバンプ(路面の凹凸)も多いし、あっちこっちでマシンがスライドしたけど、愉しいレースだった」と、しっかりフォローを入れることも忘れない。

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