ゲリラ豪雨で大波乱。今年の鈴鹿8耐を制したのは? (2ページ目)

  • 西村章●構成・文 text by Nishimura Akira 竹内秀信●写真 photo by Takeuchi Hidenobu

 雨の勢いは衰えたものの、水浸しの路面状態でスタートした決勝レースは、F.C.C.TSRホンダの第1ライダー、秋吉耕佑がホンダのマシンとコースを知り尽くした強みを発揮し、開始早々から圧倒的な速さを見せつけて大きなリードを築いた。これを、ヨシムラスズキ・シェルアドバンスチームの津田拓也や、レジェンドオブヨシムラスズキ・シェルアドバンスチームの青木宣篤が、後輪から猛烈な水しぶきをあげながら追う展開。

 青木は6周目のコース後半セクション130Rで津田を捉え、抜き去った直後にオーバーラン。コントロールを失って転倒し、マシンは大破した。「レジェンド」として大きな注目を集めたチームだったが、ピットで青木の走行を見守っていたケビン・シュワンツ(アメリカ)は、このアクシデントにより結局、決勝レースは1周も走行しないまま終えることになった。転倒した青木は、あまりの出来事に放心し、自責の念に駆られてしばらく立ち上がることもできないでいた。

(その後、電話取材で本人に確認したところ、担架で運ばれた青木は左手を負傷していたことが判明。早期の診断では左手親指以外の四指と手首を骨折しており、再度地元の病院で精密な検査を受けた後に手術を実施する予定で、その後はしばらく休養を取り治療に専念する方向だという)

 コース上では、秋吉が周回ごとに後続との差を開き続け、25周回を走行してチームメイトのジョナサン・レイ(イギリス)にマシンを託した。今年のSBK(スーパーバイク世界選手権)でランキング3位のレイは、雨が上がって路面が乾いていく難しいコンディションをものともせず、秋吉の作ったマージンをさらに確かなものにしていった。レイの走行が終わるころにはまたも雨脚が強くなり、マシンは再び秋吉へ。時間の経過とともにF.C.C.TSRホンダの最強コンビは優位性を際立たせてゆき、秋吉が再度レイにマシンを託す15時半ころには、彼らはすべてのチームを周回遅れにしていた。16時半をまわり、103周目を終えたレイがピットへ戻って秋吉がコースイン。ところが、その5周目に秋吉が130Rでフロントを切れこませて転倒。108周目で圧倒的優位から突然の奈落へと転がり落ちる、あまりに激しいクラッシュにリタイアは確実にも見えた。

 しかし、いったんは担架に乗せられた秋吉は再び立ち上がってマシンにまたがり、10分後にピットへ戻ってきた。「17時半を目処にマシンを修復する」とチーム監督は宣言し、その言葉どおり修復が完了。脚を負傷した秋吉に替えて第3ライダーがコースインしていったものの、彼らの順位はすでに50位へと沈んでいた。その第3ライダーからマシンを託されたレイは、ヘッドライトを灯(とも)したマシンで日没後のコースを走行。ほぼ確実視された優勝は、一瞬のうちにあっさりとその手から滑り落ちていったが、最後まであきらめることなく走り切ったレイは、19時30分に40位でチェッカーフラッグを受けた。

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