【F1】オーナー交代。可夢偉のシートはどうなる? (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 チーム売却と聞けば、世間ではネガティブなこととして捉えられがちだ。

 しかし、ケータハムを譲り受けた人々は、このチームをなんとか改善させようとしている。惰性で戦い続けていたこれまでのオーナーとは違う。

 実は、今季の序盤戦を終えた時点で、ケータハムにはもう新たなパーツを製造する予算が残されていなかった。設計者たちはコンピュータ上で新たなパーツをデザインし、風洞実験も進めていた。しかし、それを形にする予算がなく、改良パーツが投入されず、性能が向上しないままのマシンで戦うことを余儀なくされていたのだ。

 新たなチームオーナーはランキング10位奪取を目標として、さらなる投資も厭(いと)わないとしている。であれば、今の苦境を脱することができるかもしれないのだ。

「(これまでは)アップデートするつもりで、風洞での作業をしてるんやけど、パーツを作るお金がないって言われたら、僕らとしたら『どうしたらええんや?』っていう感じですからね。だからまぁ、悪い方には行かないと思います。これからの様子を見ましょう」

 2週間前のオーストリアGPを迎える前にも、ケータハムが撤退するのではないかという噂が立った。しかしチームはこれを否定し、ツェルトベクのレッドブルリンクで戦った。

 ケータハムは、予算上の制約で、マシンを新しくすることはできないが、戦い方で何とかしようという努力もしていた。マシンセットアップの考え方をガラリと変え、活路を見出そうとしていたのだ。

「今まではトラクションがなかったんでクルマ(の脚回り)を柔らかくしていたんですけど、それを硬くしてどれだけ走れるかということを確認したら、意外と走れたんです。タイヤの温まりを考えれば、硬い方が良いんですね。石みたいなタイヤをビシバシ叩いて走った方が良い。つまり、トラクションの確保をあきらめてタイヤの温まりを良くしようという方向性に変えたんです」

 オーストリアGPのレッドブルリンクではそれがうまくいき、再びマルシア勢と戦えそうなところまで行けた。それよりも高速コーナーが多くタイヤに熱が入りやすいシルバーストンでなら、さらにうまくいく可能性は十分にあった。

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